アナログとデジタルの測定機器

自動車整備工場における故障診断整備のススメ

せいび界2015年6月号

自動車電気の基本② 苦手分野を克服するには、知ることから始まる

現代の車両トラブルシューティングは測定作業だと、先月号でお伝えました。測定作業に使用するテスターはサーキットテスターやスキャンツールであり、その重要性は言うまでもなく、今後増加していくでしょう。しかし、今後の自動車の進化スピードを考えると、ますます測定機器が無ければ診断が出来なくなることを啓蒙していきたいと思います。

アナログとデジタルの測定機器

多くの方が持っている通常のアナログ式サーキットテスター(針式)の特徴として、常時変動する電圧の平均が読み易いことが挙げられます。O2センサー等、信号電圧が緩やかに変化する測定に向いています。もう一つのデジタル式サーキットテスターで測定者による読み取り誤差が生じにくいこと、小数点以下の電圧測定等、正確であることが特徴です。電子部品の測定や導通確認がブザーで簡単に出来る利点もあります。デジタルとアナログ、双方の利点を理解した上で、測定する条件によって使い分けることが望ましく、アナログでは対応出来ない測定(通信速度が速い)も今後増えてくるでしょう。

測定という点で、スキャンツールを使用した信号測定もデジタル式と言えます。(データモニタ、実測値等メーカーで違う)エラーコードが入力されたコンポネート(部品、装置)の供給電圧や信号の測定に使用することが多く、入庫のたびに繋ぐことを本連載では推奨しています。例えば水温センサー、O2センサー、エアマスセンサー等の項目を選択し、測定します。もちろん注意点があります。それは、このデータモニタ実測値というものは、ECUに入力されている信号を見ているのであって、コンポネートを直接測定しているわけではないということです。一言で言ってしまえば、不具合の原因までの探求、追求は出来ず、何処でトラブルが起こっているかは特定出来ないということです(配線やコネクター不良等の可能性)。つまり最終的には、コンポーネントと回路を直接調べる必要があるのです。

アナログとデジタルの信号

測定機器のアナログ、デジタル同様、信号にもアナログ、デジタルがあります。
それぞれに測定方法が異なり、このデジタル信号の測定に対応していくことが今後重要になってくると、お伝えするのが今回の最大のテーマです。

・ アナログ信号は情報を電気信号に変換して物理的に情報を伝達する
・ デジタル信号は情報を数値の組み合わせで伝達する

アナログとデジタルの信号の違いは物理的な情報と数値的な情報の違いになります。しかし、ここで間違えてはいけないのが、アナログ信号=アナログサーキットテスター、デジタル信号=デジタルサーキットテスターで測定するということにはならない点です。信号という面で言えば、サーキットテスターで測定出来る信号はアナログ信号だけです。デジタルサーキットテスターは数値がデジタルになるだけで、デジタル信号は測定出来ません。

アナログ信号とデジタル信号を見分ける

アナログ信号は水温センサー、O2センサー、エアマスセンサー、吸気温センサー等です。これらは、サーキットテスターで測定することが可能となります。出来るならば、アナログ式ではなく、今後は、正確な数値を測定するためにも、デジタル式のサーキットテスターの利用を推奨します。

デジタル信号を発信するセンサーの代表的なものに、点火信号、クランク角センサー、カム角センサー、ホイールスピードセンサー等があります。では、これらのセンサーは何で測定することが出来るのでしょうか。答えは明白でオシロスコープになります。何故サーキットテスターで測定出来ないかというと、信号のスピードの違いがあるからです。オシロスコープが必要になるセンサー類は、1000分1秒単位と速い信号スピードですので、サーキットテスターでは読み取ることが出来ないのです。つまり、オ
シロスコープとサーキットテスター、スキャンツールを駆使し、測定、診断する必要性があります。オシロスコープは速い電気信号を測定するために必要ですし、スキャンツールは故障診断には欠かせません。今後のクルマは電子部品の塊となることは安易に想像できます。だからこそ、スキャンツール同様にオシロスコープも持っていない工場は持ち、電気信号を探る整備に対応出来なくては、生き残れなくなります。

測定は繋げば出来るけど、良否判断は…

スキャンツールにしろ、オシロスコープにしても、繋ぐことは簡単です。しかし、良否の判断が難しいとよく聞きます。これは言うまでもなく、正確な数値や良好な波形などを見たことがないからです。新車にスキャンツールを繋ぐことはありませんし、オシロスコープで正確な波形を1台ずつ記録している所などありません。正確な判断が出来ない点も電気部品の苦手意識の一つとなっています。

そこで、ボッシュのKTSやトラブルシューティングマニュアルを活用することをオススメします。見えるようにして、判断する、そして直す。今も昔もやることは変わりません。やり方が変わっただけであって、本懐の部分ではクルマの整備点検を行うことは、自動車整備工場にとっての仕事です。それをお客さまは望んで来店するのですから、それらに対応出来なくてはいけません。

電気の苦手意識克服

先月号でもお話した通り、信頼の置ける自動車整備工場とは、クルマを完調にまで持っていき、お客さまに合った故障診断、整備提案が出来るメカニックが必要になります。電気信号を理解するためには、回路図の見方など、専門な知識が必要です。お客さまに対して説得力のある提案のためにも電気信号を理解する。電気信号からなる数値というものは嘘をつきません。サーキットテスター、オシロスコープ、スキャンツールから得られる情報を精査し、そのクルマに対して何が必要なのか、そして、お客さまに対して必要な提案とは何か。

総合的にお客さま、クルマと向き合っていく必要があります。スキャンツールを持ってない、オシロスコープを触ったことがない、とは言語道断です。生き残る意思があるならば、揃えるべきなのです。

監 修:ボッシュ株式会社 長土居大介

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