自動車運転革命 自動運転が業界を変える

2つの自動運転システム

ここ最近になって、自動運転の実用化について、本格的に議論されるようになった。もし、自動運転が実現したらどのようなことが起こるのだろうか。今回は、自動運転の可能性について、考えてみようと思う。

まず、自動運転について整理すると、運転支援型自動運転と完全自動運転に分けられる。運転支援型自動運転とは、これまでに市販されている乗用車にも搭載されている運転支援システムの延長線上にある自動運転の形である。クルーズコントロールや衝突軽減ブレーキなど、運転手の負荷軽減や安全性の向上といった目的を持ったシステムは、既に多くの車に搭載されている。これらのシステムは、あくまで運転手がいることを前提としていることが特徴である。運転支援型自動運転も、あくまで運転手がいることを前提に、運転手のさらなる負荷軽減や安全性の向上に指向している。

一方、完全自動運転とは、いわば運転手を必要としない自動運転を指す。乗車する人は全員が乗客であり、出発地から目的地まで運転に対して意識する必要はない。今までの運転手が行っていた役割は、システムがすべてを担う。

ここで、自動運転を二種類に大別したのは、以降の議論において、重要な意味を持つ。二つの自動運転は抱えている課題も、得られる効果も全く違うのである。

運転支援型自動運転は人間主体

運転支援型自動運転は、今までの自動車の形を大きく変えることはない。今までの自動車というのは、人間による運転のしやすさを最優先とした上で、目的に応じて設計されている。乗り心地を重視したセダン型、運転を楽しめるスポーツ型、荷物を載せることに特化したバン型、そして大量輸送を目的としたバス型やトラック型。いずれの車種も利用される目的は異なるが、いずれも人間による運転のしやすさを無視して設計されることはない。

これは運転支援型自動運転でも同様である。自動運転で運転手は運転を意識せずに運転できるかもしれないが、運転手が運転をすることがある以上、人間による運転のしやすさを無視して設計することはできない。おそらく実用化される運転支援型自動運転の自動車の形は、従来の自動車の形から大幅に変化することはなく、車両購入時のオプションの一つとして位置付けられるだろう。
ところが、完全自動運転になると、運転手を必要としないため、前提条件が全く異なることになる。次回は、完全自動運転のイノベーション力について説明しよう。

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