日車協連青年部会 第25回通常総会開催──BP EXPO構想とナフサ不足への挑戦

日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)青年部会は2026年5月23日、東京・AP新橋にて第25回通常総会を開催した。中東情勢の長期化を背景としたナフサ不足により、塗料をはじめとする副資材の供給不安が現場を直撃するなか、松本悟部会長は「青年部、いざ開国せよ」と檄を飛ばし、海外連携と国内発信を結ぶ年度事業「BP EXPO」始動を正式に宣言した。鈑金塗装業界の今後を占う重要な総会の模様をレポートする。

公取委 が登壇──「取適法改正」と車体整備業の未来

総会本会議に先立ち、午後2時より特別講演会が行われた。登壇したのは公正取引委員会 経済取引部 企業取引課の大吉規之氏。テーマは「取適法改正による自動車車体整備業界における影響について」。

長年「下請け体質」に置かれてきた車体整備事業者にとって、取引適正化法(取適法)の改正は経営の根幹に関わる論点である。大吉氏は法改正の趣旨と運用上の留意点について解説し、来場した全国の青年部メンバーは熱心に耳を傾けた。後の来賓挨拶では小倉龍一会長(日車協連)自身も「午前中に取引先ディーラーとこの取適法について議論を交わしてきた。我々は下請けではなくパートナーである、と諸条件をこちらから提示するスタンスで臨んでいる」と語り、業界全体で意識転換が進んでいることを印象付けた。

「冬を越えた業界は強い」──松本部会長挨拶

総会開会後、登壇した松本悟部会長は、現下の業界環境を率直に語った。

「中東情勢の影響によるナフサ不足から、塗料をはじめとする副資材の供給が非常に滞っています。現場では『材料が入らない、納期も読めない、仕事を受けたくても受けられない』という状況がすでに起き始めている。ただ私は、これを単なる材料不足だとは思っていません。今まで当たり前だったものが少しずつ崩れ始めている──この状況自体、この時代こそが一番恐ろしい」

そのうえで松本部会長は、危機のなかから生まれた連帯の動きを紹介した。青年部会では材料不足を少しでも解消するため、会員同士が材料を融通し合えるオンライン掲示板を制作。松本部会長の所属する岐阜単組では「うちならまだ材料あるよ」「この情報提供するよ」といった言葉が自然に飛び交っているという。「不謹慎かもしれませんが、正直、嬉しかった。この業界はまだまだ強い。ただ名刺交換するだけの団体じゃない。苦しい時こそ支え合って動く組織だと改めて実感しました」と語気を強めた。

そして、年度スローガンに掲げた「4C」=Connect(つながり)/Challenge(挑戦)/Continue(継続)/Cool(誇れる業界)を改めて打ち出し、「今は冬かもしれないが、冬を越えた業界は強い。確実に春はやってくる」と力強く締めくくった。

令和7年度事業報告──「閉じた業界」から「外と繋がる業界」へ

第1号議案として松本部会長から令和7年度事業報告が行われた。本年度の活動は「4C」を旗印に推進され、特に海外連携への踏み出しが大きな成果として挙げられた。

  • ZKF(ドイツ)との交流:2025年10月31日、ドイツ最大の車体整備業界団体ZKFとオンラインキックオフミーティングを開催。TÜVラインランドジャパンの栗田氏がハブ役を担い、日独双方のBP業界の現状と課題について意見交換を実施
  • アウトメカニカ上海視察:2025年11月27〜28日、24名の有志メンバーが上海に渡り、最新設備・新技術・海外市場動向を視察
  • メッセフランクフルトとの提携:世界各地でアウトメカニカを主催するメッセフランクフルト(ドイツ)とバーター契約を締結。世界中のBP業界団体とつながるルートを確立

このほか、全国自動車研究会(全国の工業高校による団体)との交流を開始し、学生との接点創出、企業見学・インターン受入れの基盤を構築。Instagram・FacebookによるSNS発信もスタートさせ、社会への可視化に踏み出した。姉妹単組による広域連携も8チーム体制で再構築されている。

 


【事業発表】「点ではなく、線でつなぐ」──BP EXPOに集約される年度戦略

総会後半、青年部会の真骨頂とも言える事業発表が行われた。松本部会長はこのフェーズの冒頭、年度設計の根本思想を次のように述べた。

「今年度、事業を組み立てる上で強く意識したのは『点ではなく線でつなぐ』ということです。海外連携、学生との交流、SNS発信、経営改善、SST事業、そしてBP EXPO。一見別々に見えるかもしれませんが、すべて一本の線でつながっている。それは『日本のBP業界の価値をもう一度社会に伝えていく』というテーマです」

「事業をやる年度ではなく、業界の未来像をつくる年度だ」──この一言が、本年度活動の基本姿勢を端的に表している。

組織プロジェクト:「外とつながる組織への転換」

掲げるテーマは「認知される組織」、サブテーマは「外とつながる組織への転換」。情報共有・発信・連携の3本柱で取り組みが進められている。

  • Googleワークスペース活用:会議資料・活動報告・写真資料をドライブに集約。「情報を探す組織から、情報が共有される組織へ」のシフトを推進
  • 姉妹単組:全国29単組を8グループに分割し、地域を越えた横の連携を構築
  • SNS発信:Instagram、Facebook、Threadsの3プラットフォームを活用。「未来へつなぐプロフェッショナル」をコンセプトに工場紹介を展開し、採用や業界イメージ向上に直結させる
  • 教育機関連携:工場見学から職業体験、インターン、就職へとつながる「学校と工場をつなぐ」流れの構築

平井リーダーは「仕組みはできた。次は『使われる仕組み』へ。これが今年度から次年度へつなぐ一貫したメッセージ」と総括した。

経営プロジェクト:「現場目線」で人・もの・金を再構築

経営プロジェクトはこの1年で約60回の会議を重ねた、まさに気合の入った布陣だ。

スローガンは「現場目線──現場なくして経営なし」

【人パート】モデルケース3社で経営改革に本気で挑戦

「社長がいないと判断できない」「忙しすぎて会話する余裕がない」「育成したくても時間がない」──全国の現場で起きているこの課題に対し、本気でメスを入れるモデルケース事業所3社が紹介された。

  • 新星自動車(和歌山県)──幸福度アンケートや会議体を実践し、「現場なくして経営なし」を体現
  • 石原自動車ボディ(群馬県)──価値観共有と現場環境改善に取り組み、本音ヒアリングを実施
  • 曲山自動車工業(福島県)──SNS発信やブランディングにも積極的に挑戦

3社では現在、エンプロイー・ハンドブック(会社の理念・価値観・行動基準をまとめた文書)の作成が進行中。来年の総会では再度幸福度アンケートを実施し、変化の実証を報告する予定だ。

【ものパート】俺のSST──シンナー不足対策のノウハウも募集

各社の現場に眠るオリジナル工具・治具・ノウハウをオンラインカタログ化する「俺のSST」事業の現状が報告された。すでに全国から約20種類のSSTが集まり、現在もLINE経由で受付中だ。

注目すべきは、シンナー不足対策のノウハウも併せて募集している点である。

「昨今のシンナー不足の問題を少しでも軽減できるよう、塗料の再生・再利用、使用量を抑える工夫、道具などの情報もいただけると非常に助かります」

ナフサ不足が現場の喫緊の課題となっているなかで、業界全体の知恵を持ち寄って耐え抜こうという姿勢が打ち出されている。SSTに加え、現場目線のユニフォームも募集対象。集まった情報はWEBカタログとして全国へ発信され、BP EXPOでも展示・紹介される予定だ。

【金パート】「知らないと損をする時代だからこそ学び」

本年度開催したセミナーシリーズが報告された。

  • 2025年11月18日:助成金セミナー
  • 2026年1月23日:Googleマップ活用セミナー(── 奈良、石川、埼玉など各ブロックでの再開催が相次ぐ人気テーマに)
  • 2026年4月23日:ChatGPT × NotebookLM AI活用実践セミナー

特にAI分野は反響が大きく、次年度はAIによるレバレート計算、現場改善アプリ開発、AIエージェント活用など、さらに踏み込んだテーマで展開する方針が示された。


BP EXPO 2026──10月10日、長野県千曲市で開催

そして本日の発表の白眉が、BP EXPOの概要発表である。

開催概要

  • 日時:2026年10月10日(土)午前10時開場
  • 会場:長野県千曲市 上山田文化会館(メイン会場)/千曲市総合観光会館駐車場(屋外展示)
  • 定員:会員枠+一般枠 合計500名

「これは全国大会ではない。両プロジェクトの発表を合体させて『見える化』するためのイベント」と性格づけた。従来の会員向け全国大会から脱皮し、業界外への発信を主目的に据えたことが最大の特徴である。

主なプログラム

  • 俺のSST発表:各単組から推薦されたSSTトップ3を集約してプレゼン
  • 単組発表
  • ワールドディスカッション:松本部会長たっての企画。海外BP業者・団体とオンラインで接続し、世界のBP業界とリアルタイムで意見交換
  • 車両展示:日車協連枠20台+「ナガノフッコースタイル」枠30台のコラボ展示。カスタムカー、レストア車、ラッピング車両など、青年部メンバーが手掛けた車両を披露。地元・千曲市で千曲川氾濫の復興支援活動を続ける高校教員が運営する人気カーイベントとのコラボが実現
  • キッズ向けエアブラシ体験
  • キャンギャル:ナガノフッコースタイル出身のモデルが登場、堅苦しさを抜いた業界イベントを演出

「まだ荒削りなところはあるかもしれませんが、皆さんがぜひ行ってみたいと思える企画を必ず実行委員会が用意します」と語った。


「青年部、いざ開国せよ」──松本部会長の締めくくり

事業発表の最後、登壇した松本部会長は事業サポーターへの謝辞を述べた。

  • TÜVラインランドジャパン・栗田氏──ドイツZKFとの重要なハブ役
  • マガジンX編集長・新良氏──業界の現状と課題を一般社会に伝える役割
  • JALBA・吉野氏──「修理の透明性」が問われる時代における制度・ツール運用について全国各地で講演

そして締めくくりに、印象的な言葉を放った。

「我々の業界はまだまだ進化できる。日本のBP業界は世界に通用する。ただしこれからは技術を持っているだけでは足りない。伝える、つながる、見せる──これが必要です。だからBP EXPOをやる。だから世界に行く。だから学生とつながる。これが全部、すべて一本の線なんです」

幕末、日本は開国によって大きく変わりました。外を知った若者たちがこの日本を変えた。ならば、今度は我々の番です。閉じた業界でこのまま終わるのか、それとも世界に向かうのか。私は後者を選びたい。だから皆様、ともに行きましょう。青年部、いざ開国せよ

会場は大きな拍手に包まれた。

まとめ:ナフサ不足の冬、それでも前を向く青年部の覚悟

中東情勢に端を発するナフサ不足、副資材の供給不安、保険会社との交渉、取適法改正、令和9年度からの自動車車体電子制御装置整備士制度──課題は山積している。しかし日車協連青年部会は、材料融通の助け合いプラットフォームシンナー使用量削減ノウハウの共有水性塗料による子ども体験イベントといった、危機を逆手に取った具体策を次々と打ち出している。

そして、それらすべての取り組みは「点」ではなく「一本の線」として、10月10日のBP EXPOに集約される。鈑金塗装業界に注目が集まる今こそ、業界の真価が社会に問われる時だ。

「冬を越えた業界は強い」──松本部会長のこの言葉が、現実のものになるか。10月10日、長野・千曲市での「開国宣言」に、せいび界も注目していきたい。

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