輸入車の整備に取り組もう!

自動車整備故障診断整備のススメ

せいび界2013年11月号

輸入車の整備に取り組もう!

食わず嫌いなのか、輸入車の整備・修理に苦手意識を持っている整備工場と、輸入車は国産車と異なる特別なクルマだと考えている整備士は多い。だからこそ、出来れば入庫は拒否したいと思い、自社に入庫があっても、ハイブリッド車と同じくディーラーもしくは輸入車専門店に渡してしまっているのではないだろうか。
そこで今回はそんな整備工場の参考になればと思い、輸入車の整備に関する事柄を紹介していく。

輸入車の整備に手を着けない理由

よく整備工場を医者に例えることがあるが、患者が外国人だから診察をしないという話はありえない。時計も「国産ではないから」と言って、修理しないという時計屋もないだろう。ましてや、自動車整備工場と名乗るのであれば、整備のプロとしてのプライドを持って、「どのようなクルマでも直せる」と言えるのが本当のメカニックではないだろうか。
輸入車と国産車といっても大きな違いはなく、タイヤが4 つあって、エンジンがある。それなのに、なぜ輸入車の整備を扱わないのか。

その理由として一番多いのが、輸入車を知らない、触った経験がないというものである。国産車でも同じことが言えるが、整備や修理した経験のないクルマは敬遠してしまう傾向にある。それでは、いつまで経っても経験値が増えず、輸入車に取り組むことが出来ないのである。
他にも、最近は聞かなくなったが、ベンツなどのクルマにはトラブルになりやすい人が乗っていることが多いから避けているとか、フルスモークのベンツやトランクの中に怪しい物を見た等の話もある。
また、輸入車は金額が高いということも避ける理由の一つだ。整備や修理をするためには、内装などを取り外すことも多々あるが、国産車と造りが異なるため、変に力を入れてしまったり、どうやって取り外せばよいのか分からなかったりして壊してしまうことがある。その結果、自費で弁償するには高額なために尻込みをするという訳だ。何か失敗があると困るから扱わないということである。

また、工具の問題もある。輸入車でよく使われているトルクスのネジなど、専用の工具がなければ作業が難しいものもあり、特殊工具を揃えることが出来ないために輸入車の整備をしないというのだ。
扱わない理由や出来ない理由は探せばいくらでも出てくるが、いずれも輸入車の整備を扱わない理由にはならない。上記の理由は全て何とかなるものばかりだ。特に工具などは安くなってきているし、輸入車について知らないならば、知ればいいだけのことである。

輸入車を整備しなければならない理由 むしろ、やらなければならない理由として、輸入車の販売台数の増加がある。自販連の発表によれば、2013 年9 月の輸入車販売台数は37,459 台(前年同月35,841 台 前年同月比104.5%)と2012年7 月から14 ヶ月連続で前年同月比プラスで増えている。エコカー補助金終了後に国産車が大きく伸び悩んだこととは対照的に、輸入車は台数を伸ばしているのである。

近年、壊れにくいハイブリッド車が急激に普及し、今後の仕事が少なくなると言われる中で、少しでも仕事を増やしたいならば、市場を拡大させている上に、慣れ親しんだガソリン車の割合もまだ多い輸入車に整備工場も対応すべきではないだろうか。
同時に、なぜ輸入車が売れているのかの意味も考えなくてはならない。

そもそも輸入車のユーザーは、クルマであれば何でもいい訳ではない。
ワゴンR でもカローラでもなく、なぜアウディやBMW に乗るのか。そこには、こだわりがあるからだ。憧れだったり、走りが好きだったりというこだわりがあるからこそ、輸入車に乗っているのである。しかも、輸入車に乗っているユーザーは、富裕層の傾向が高い。そのため、ワゴンR やカローラなどの大衆車に乗っているユーザーよりもクルマにかける修理代に糸目をつけない。

例えば、オイル交換にしても、輸入車のユーザーはクルマに対しての愛情やこだわりが強いため、上手く提案すれば、それでクルマがより良くなるならと提案に乗ってくるものだ。また、輸入車のユーザーは台湾製や中国製のタイヤを履かず、最低でも国産のタイヤを履いていることが多い。つまり、輸入車を扱うと1 台当たりの単価が高くなるのだ。
また、決して安くない輸入車が伸びている背景には、今、国産車にこれが欲しいというクルマが少なくなったことも挙げられる。昔は若者が「いつかこのクルマに乗るんだ」という夢や憧れたクルマがあったものだが、今は誰もがプリウスなどの燃費のいいクルマにばかり乗っている。

駐車場に行ったら、プリウスばかりで自分のクルマがどれか分からないなどということもありがちだ。それに対して、輸入車であれば一目で分かる。なぜなら埋没しないデザインだからである。
そういったステータスを感じさせるクルマが輸入車には多い。円高などの影響も少なからずあるだろうが、こだわりを持った輸入車ユーザーが日本にはまだまだ多い。そのユーザーを自ら拒絶してしまうのはもったいない。ビジネスの観点からみても、市場を拡大するチャンスがあるのに、輸入車が苦手だからと自らチャンスを狭める理由はないはずだ。

輸入車と国産車に違いはない

輸入車も国産車もエンジン制御システムは何も変わらない。どちらも、センサーが感知した情報を元にECU が判断を下し、ECU からの指示でアクチュエータなどを用いて調整している。こうしたシステムはボッシュが開発したフィードバック制御ステムから派生したもので、輸入と国産車に違いはないのである。使用している部品が異なる場合もあが、論理的に考える力としっかりしたスキャンツールがあれば、分かるようになっている。

またスキャンツールで行う故障診断も、欧米で先に搭載された自己診断機能を利用している。というこは、ヨーロッパ車に強いスキャンツールを持てば、輸入車も苦にならずに整備や修理が出来るということである。輸入車の整備に取り組むためにも、ヨーロッパ車に強いスキャツールを導入しよう。

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