今さら聞けないO2 センサーの話 vol.2

自動車整備故障診断整備のススメ

せいび界2014年3月号

今さら聞けないO2 センサーの話 vol.2

今回は、前回に引き続き、今さら聞けないO₂センサーの故障診断方法について紹介する。

O₂センサーの役割

O₂センサーの故障診断方法について話す前に、まず知っておいていただきたいのは、O₂センサーが故障した場合の症状についてである。
どういった動きをするのか、どのような状態になるのかを頭に入れて欲しい。そうすれば、調子の悪いクルマにスキャンツールをつないだ時に故障コードが検出されない場合でも、ドライバーへの問診を通じてあるいは、クルマに起きている症状を見ることで、O₂センサーの故障であると当たりをつけることが出来るからである。

さて、先月号で故障事例として挙げたO₂センサーヒーター断線の故障では、加熱回路が故障しただけで、O₂センサーそのものは問題なかった。
エンジンをかければ、自然と温度が上がっていく。O₂センサーも正常に働くようになり、クルマ自体の調子は悪くない、つまり、目立った症状はほとんど出ない状態である。一方、O₂センサー自体に問題があって、フィードバック信号が出ていない場合、どのような症状が起こるのだろうか。それを知る手がかりとして、この先月号で話したO₂センサーの役割を思い出して欲しいのだ。

上流と下流のO₂センサー

最近のクルマには触媒の上流と下流にO₂センサーが付いているクルマがある。O₂センサーはクルマ1 台に2 本付いていることが多いのだが、中にはV6 エンジンのように片バンクずつエキゾーストマニホールドがあって、触媒が2 本であったり、合流して1
本であったりするクルマもある。この場合、O₂センサーは3 本や4 本付いていることになる。

例えば、V6 エンジンのエスティマを故障診断した時に、O₂センサーヒーター故障のコードが検出されたとする。該当したのは、O₂センサーB1S1 であった。このB1S1 とは「バンク1 センサー1」という意味で、V6 エンジンでは1 番シリンダにある方がバンク1 になる。
なぜO₂センサーがいくつも付いているのか。当然、それぞれの役割を持っているから付いているのである。

上流側のO₂センサーはエンジンから出た排気ガスを検知しており、エンジンの中の空燃比を監視する役割を持っている。
反対に下流側のO₂センサーは、触媒により浄化された後の排気ガスの残留酸素量を検知している。つまり、触媒が酸化還元しているかどうかを監視する役割を持っているのである。
このように同じO₂センサーでも、上流と下流で役割が異なれば、故障頻度や劣化速度も当然変わってくる。

同じ排気ガスにさらされるのでも、排気直後と浄化後ではどちらが厳しい環境だろうか。より厳しい環境に置かれているのは、排気直後のガスにさらされる上流のO₂センサーの方で、下流のO₂センサーよりも壊れやすい。浄化された排気ガスを検知している下流のO₂センサーはさほど傷まない(もちろん経年劣化はあるので、壊れない訳ではないが)。つまり、O₂センサーの故障コードが出たからといって、必ずしも全てのO₂センサーを交換する必要はないということなのだ。

O₂センサー故障時の症状

上記のような役割を持つO₂センサーが故障すると、現在の走行状態に適した燃料調節が行われていない状態になる。その結果、アイドリングが落ち着かない、エンストしてしまう、ドライバビリティが悪い、加減速が上手くいかない、煤が大量に出てくるな
ど、様々な症状が出る。

つまり、O₂センサーの故障によって、エンジンに関わる様々な問題が起こるということだ。
また、エンジン不調だけでなく燃費も悪化してしまう。これは、燃料調節が上手く出来ずに、濃い燃料がそのまま触媒にダメージを与えてしまい、触媒の劣化を早めることになるからである。燃料調節が出来ず空燃比が狂うと、炭化水素(HC)による煤が触媒を詰まらせるのである。

空燃比が狂っても、フェイルセーフ機能があれば、ECU が代替データによって空燃比を瞬時に補正して問題なく走行させてしまう。そのため、故障コードが出ないこともある。
O₂センサーの故障に関連する、上記のような症状が出たにも関わらず、故障コードが検出されない場合、O₂センサー故障時の症状を知らなければ、O₂センサーを疑うこともない。
逆に、下手にスキャンツールがあると、故障コードが検出されないことで、故障原因はどこかとあれこれ調べることになり、効率が悪い。スキャンツールに頼りきってしまうのも良くないということだ。

最近のクルマであれば、O₂センサーから信号が出ていないと、故障コードが検出されるクルマもある。しかし、まだまだ故障コードの出ないクルマの方が街の中を多く走っているので、故障コードの出るクルマと出ないクルマがあることも知ってもらいたい。

O₂センサーの故障診断方法

さて、ここからが本題。O₂センサー故障時の症状を頭に入れたら、次に考えるのが故障診断方法である。
さて、O₂センサーの故障を診断するには、波形分析を行えば、O₂センサーの故障の有無が分かる。繰り返しになるが、O₂センサーは、排気ガス中の残留酸素量を計測して、ECU にフィードバックしている。その際にO₂センサーからECU に残留酸素の「濃い・薄い」という信号を送っており、その信号をグラフ化して、O₂センサーに異常がないか確認することが、O₂センサーの故障診断方法である。
そして、ここで重要なのが、O₂センサーが正常な働きをしている時の形を知っているかどうかである。正しい波形を知らなければ、目の前にある波形が正しいものかどうか判断がつかないからだ。

上流と下流のO₂センサーの数値グラフに表示され、特に上流のO₂センサーの数値が0.1 ~ 0.9V まで間を激しく動き、上昇と下降を繰りす(上記グラフを参照)。反対に下のO₂センサーはほぼ反応がなく、一定の数値のまま推移していくのが正しい波形となる。
エンジンの中を監視している上流O₂センサーは、先述のように、厳い環境に置かれているため、反応も大きくなる。下流のO₂センサーは、触媒によって浄化された排気ガスを監視しているので、もし反応があれば、触媒に何かしらの問題が起ている可能性が考えられる。

このような波形を見るためには、スキャンツールのグラフ機能が必要となる。このグラフ機能を使えば、他も色々なことが見えてくるので、この機能を持ったスキャンツールを持つことをおすすめする。また、既に持っいるのであれば、このグラフ機能使いこなして欲しい。

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