一般社団法人自動車公正取引協議会(公取協、鈴木俊宏会長)は6月10日、東京プリンスホテル(東京都港区)において2026年度定時総会を開催した。来場とオンラインを併用したハイブリッド形式で、正会員総数295名のうち、来場63名、オンライン20名、委任状提出147名の計230名が出席して成立。2025年度事業報告書(案)・決算書(案)、任期満了に伴う理事・監事選任(案)の全議案が承認されたほか、2026年度事業計画が報告された。
中古車販売や買取、板金・車体整備を手がける整備事業者にとって見逃せない内容が多く盛り込まれた今総会。本稿では「せいび界WEB」読者の実務に直結するポイントを中心にレポートする。
措置件数は計10件 修復歴の不当表示には違約金200万円の賦課を審議
2025年度に公取協が規約違反に対して講じた措置は、四輪車関係で計10件(いずれも表示関係)。内訳は文書注意3件、警告2件、厳重警告3件、違約金2件である。
| 措置区分 | 新車 | 中古車 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 文書注意 | 3 | 0 | チラシ広告調査における写真と価格の不一致 |
| 警告 | 1 | 1 | 運転支援機能に関する不当表示(新車)、不当な価格表示(中古車) |
| 厳重警告 | 0 | 3 | 修復歴に関する不当表示 |
| 違約金 | 0 | 2 | 修復歴の不当表示のうち特に悪質なもの(厳重警告と併科) |
新車の警告1件は、テレビCMにおいて運転支援機能について告知する際、運転支援機能である旨を表示せず「自動運転(技術)」との用語を使用し、消費者の誤解を招くおそれがあったというもの。自動運転化技術の表示をめぐる措置として注目される。
とりわけ重い内容となったのが修復歴の不当表示への対応だ。オークションで落札された修復歴車・冠水車の販売時表示実態調査の結果に基づき、修復歴に関する不当表示を行った会員2社に「厳重警告」および「違約金」の措置を実施。このうち1社は、措置に基づく誓約書の提出と違約金の支払いに応じなかったため、規約第20条第2項に基づく違約金200万円の賦課について審査委員会で審議中であり、今後、会長裁決を経て当該事業者に決定案が通知される。総会の説明によれば、当初の違約金は遅延利息を加えて引き続き請求した上で、新たに200万円を賦課する方向だという。措置に従わない事業者にはさらに重い制裁が科される——公取協の規約運用が「実効性の段階」に入ったことを示す事例といえる。
「支払総額で購入できない」苦情は年90件 立入調査で警告も
2023年10月にスタートした中古車の「支払総額」表示について、消費者から寄せられた「支払総額で購入できない」等の苦情相談は、2025年4月から2026年3月までで90件(月平均7.5件)。減少傾向にはあるものの、依然として根絶には至っていない。
公取協は苦情相談の多い事業者に対する販売実態のモニタリングを継続しており、前年度のモニタリングで問題が認められた14社に対し、近く「改善要請」を実施する予定だ。さらに、改善要請に応じない事業者への実地(立入)調査の結果、大手中古車専業店1社に対して不当な価格表示(改正規則施行前の行為)を理由に「警告」の措置を実施。もう1社についても調査を継続している。
参考までに、前年度に実施された販売実態モニタリング(大手等20社48店舗対象)で見られた問題点としては、ETCセットアップ費用を支払総額に含めて表示し費用の支払いを強要(9社13店舗)、管轄運輸支局内の登録にもかかわらず「管轄外登録費用」を請求(5社)、支払総額に含まれない定期点検整備やパック商品の購入を購入条件化(2社)、車庫証明手続代行費用の強要(2社)などが挙げられている。中古車販売を兼業する整備工場にとっては、自社の店頭表示・見積実務をセルフチェックする格好の材料だろう。
「販売方法の問題」を「表示の問題」へ 規約見直しの新たな方向性
2026年度事業計画で特に注目したいのが、新車・中古車の不適切な販売を防止するための規約見直しの検討だ。
新車では、特定の新車の販売と併せてオプション等を購入させていた疑いから、公正取引委員会が会員ディーラー1社に対し独占禁止法違反(抱き合わせ販売に該当)のおそれがあるとして「警告」を行った事案が発生。新車の「抱き合わせ販売」等の苦情相談は2025年度で70件(月平均5.8件)にのぼる。総会の説明では、苦情はいったん減少しても、需給バランスが逼迫した人気車種が出ると再び増加する傾向が繰り返されているという。
こうした状況を踏まえ公取協は、周知活動やモニタリングによる監視だけでは限界があるとして、「適切な販売方法をあらかじめ事業者が消費者に表示することを規約で定める」方向での見直しに着手する。具体的には、新車・中古車の展示車や価格表、見積書・商談メモ・注文書等において、新車は「車両本体のみでも購入できる」旨、中古車は「支払総額のみで購入できる」旨のメッセージを必ず表示し、オプション等の購入画面では「オプション等の購入は任意であり、不要な場合は購入する必要はない」旨を表示することを規約上の義務とする構想だ。これにより、販売方法の問題を「表示の問題」として規約の枠組みで取り扱えるようにする狙いがある。
ただし、見積・注文システムの改修を伴うため、規約改正から施行まで1年程度のリードタイムを設ける考えも示された。中古車販売を手がける事業者は、今後の検討状況を注視しておきたい。
プライスボードは「A4判以上」に 施行規則改正案を再申請へ
店頭展示車の表示(プライスボード)に関する施行規則改正案は、昨年6月の定時総会で承認を得た後、消費者庁への承認申請に向けた調整過程で指摘を受け、一部修正のうえ改めて承認申請を行うこととなった。
修正のポイントは、用紙の大きさに関する規定を「縦21.0センチメートル、横29.6センチメートル以上」から「A4判以上」へ改めるなど、JIS規格に基づく表記で明確化したこと。また文字の大きさについても「A3判以上」「A3判未満~B4判以上」「B4判未満~A4判以上」と用紙サイズに応じた区分で明確に規定し直した。表示すべき文字の大きさ自体に実質的な変更はないという。今後、消費者庁および公正取引委員会に承認を申請し、承認後は電子ペーパー等のデジタル機器を用いた電子プライスボードへの対応も含めた周知活動が展開される予定だ。
修復歴の骨格部位名称が変更へ 査定・買取実務は要チェック
車両構造や設計技術の変化により骨格部位の構成・使用範囲が多様化していることを受け、日本自動車査定協会(日査協)の修復歴判断基準で骨格部位の名称変更が行われることを踏まえ、公取協も中古車施行規則の改正案を策定した。変更されるのは以下の3点。
- フレーム(サイドメンバー) ⇒ サイドメンバー・フレーム
- フロントインサイドパネル ⇒ インサイドパネル
- ピラー(フロント、センター及びリヤ) ⇒ ピラー
あくまで部位の名称変更のみであり、修復歴の定義そのものが変わるわけではない点には注意が必要だ。とはいえ、査定・買取や中古車販売の現場では日常的に使う用語であり、改正後の周知活動とあわせて押さえておきたい。
EV・FCV時代の燃費・電費表示ルールづくりが本格化
次世代自動車の普及に対応した表示ルールの整備も進む。自工会等からの要請を踏まえた検討項目は次のとおり。
まず、プラグイン燃料電池車(FCV)の「総走行距離数」(一充填走行距離+一充電走行距離)について。国土交通省で試験法の追加が検討されているが、総走行距離数は「国土交通省審査値」とはならない予定のため、現行規約のままでは表示できない。そこで、国交省が定める試験方法に基づき測定された数値であれば客観性が担保されるとして、カタログ等(主要諸元欄を除く)に表示できるようにする新車施行規則改正案を策定した。
また、EV・PHVの「総電力量(kWh)」は道路運送車両法第75条に基づく諸元値ではないため主要諸元欄には表示できないが、消費者がEV等の購入を検討する際に必要な情報であることから、国際基準に基づく計測法による数値は表示可能とする表示基準を策定する予定。重量車EVの「一充電走行距離」についても、JH25モードによる計算値をカタログ等に表示できるよう、2026年6月の改正を目指して国交省と策定作業が進められており、「主要諸元」欄以外で参考値である旨を併記して表示する方向だ。このほか、オフサイクルクレジット制度に基づく省燃費効果の表示基準についても検討が進む。EV・FCVの整備や販売に踏み出す事業者には、商談時の説明材料にも関わる動きとして押さえておきたい。
下請法は「取適法」へ 整備業界の取引適正化に来賓も言及
整備業界に直結するのが、公正取引に関する法令をめぐる動きだ。2025年度には、下請法違反(不当な経済上の利益の提供要請)で公取委が会員4社に「勧告」を実施したほか、自動車ディーラーと車体整備事業者間の取引における下請法違反被疑事件の集中調査の結果、160社に指導が行われた。公取協はこれらについてAFTC INFORMATIONで注意喚起を行うとともに、本年1月1日に下請法から改正・施行された「取適法」(中小受託取引適正化法)について、自動車業界向けマニュアルを作成し、5月から8月末までオンライン研修を開催中。総会の説明によれば約1,600名が受講を申し込んでおり、業界の関心の高さがうかがえる。
来賓挨拶でも取引適正化への言及が相次いだ。公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長は、優越的地位の濫用に関するガイドラインを改正し「協議を行わない一方的な価格決定」などを違反の想定例に追加することや、給付受領から60日を超えて代金を支払わないことを禁止する告示の新設を検討しており、パブリックコメントを経て今月中にも成案を公表できるよう作業を進めていると説明。国土交通省の来賓も、昨年末に公表された整備作業の下請取引に関する集中調査結果に触れ、業界全体の健全な発展のための適正な取引を要請した。
ディーラーから板金・整備作業を受託する事業者にとって、発注側への規制強化は適正な価格転嫁・価格交渉の追い風となる。レバーレート見直しの交渉材料としても、これらの制度動向は確実にフォローしておきたい。
役員改選 鈴木俊宏会長を再選
任期満了に伴う役員改選では、理事22名・監事2名を選任。総会終了後に開催された第156回理事会において、会長に鈴木俊宏氏(自工会副会長)を再選したほか、自販連、全軽自協、輸入組合、日整連、中販連の各団体トップら5名を副会長に選定した。あわせて顧問・相談役の委嘱、各委員会委員長の選任も行われた。
なお、2026年3月末現在の規約参加事業者数は四輪・二輪合計で19,330社(期首比182社減)。減少の大半は二輪関係(180社減)で、販売店経営者の高齢化が背景にあるという。
整備事業者は何を読み取るべきか
今総会から見えてくるのは、公取協の活動が「周知・啓発」から「監視・措置の実効性確保」のフェーズへ明確に移行しつつあることだ。違約金200万円の賦課審議はその象徴であり、支払総額表示やプライスボード、修復歴表示は、中古車販売を兼業する整備工場にとってもはや「知らなかった」では済まされない領域になっている。
一方で、注文書等への表示義務化を軸とする規約見直しや、取適法による発注側への規制強化は、ルールを守る事業者が正当に評価され、適正な対価を得やすくなる環境整備でもある。自社の店頭表示・見積書面の点検とあわせて、公取協が無償公開しているプライスカード作成システム(ディーラー関係219社・専業店関係940社が利用登録、データ登録約5万7千件)などのツール活用も検討してみてはいかがだろうか。