スマートエネルギーWEEK2020で話題に、お米からできたレジ袋

 スマートエネルギーWEEK2020が2月26~28日に東京ビッグサイトにて開催された。

 今回は新型コロナウイルスが猛威を振るう中での開催となったため、スタッフのマスク着用及び来場者へのマスクの配布、サーモグラフィーによる入場チェックなど感染症対策を講じたものの、来場者の減少は免れなかった。

 そうした中でもノーベル化学賞受賞 吉野彰工学博士の記念講演は、特設会場と別室の中継会場それぞれに来場者が集まる盛況ぶりだった。

ノーベル化学賞受賞 旭化成株式会社 名誉フェロー 吉野 彰 工学博士

 また併催企画の資源リサイクルEXPO会場内、郵便局物販サービス(株式会社バイオマスレジン南魚沼との共同事業)ブースでは、来場者数の減少を感じさせない人だかりができていた。

 なお、本展示会は大阪開催も決まっており、インテックス大阪にて9月9日(水)から11日(金)まで開催予定。

 

来場者数  初日  二日目 三日目

2019年東京 24,200 20,691 21,685 合計66,576人 

2020年東京 7,672  6,298  4,536  合計18,506人

 

お米がプラスチックに!

 様々な用途で使われるプラスチック製品。その中でもレジ袋はスーパーやコンビニなど日々の生活に欠かせない。その一方で、海洋汚染など深刻な環境問題の原因にもなっている。

 環境対策として、プラスチック製品の材料に植物性由来の環境負荷の少ないLPA(生分解性プラスチック)を使用する動きもあるが、耐久性、モラルハザード発生の危険性から一斉転換することも難しい。

 そうした状況のなか、日本郵政は今年からライスレジン®製のレジ袋を導入する。

 ライスレジン®は国内有数の米の生産地である新潟県に本社置く、株式会社バイオマスレジン南魚沼が開発したバイオマスプラスチック。非食用の「資源米」等を原料としており、フードロスを解消の寄与している。

 素材としては、オレフィン系樹脂との相溶性がよく加工適性に優れ、レジ袋だけではなく食品パッケージやアメニティセット、乳幼児用玩具など、幅広い用途で成形可能となっている。

 今回日本郵政で導入されるレジ袋のバイオマス比率は30%となっており、既に魚沼市で導入されているゴミ袋(バイオマス比率10%)よりも環境に優しい製品になっている。

 展示されていたライスレジン®の中にはバイオマス比率51%で着色したものや、更に比率を高めた70%のモノも展示されていた。

 恵方巻の廃棄などで浮き彫りになったフードロス問題。このライスレジン®を使用した技術が各地に広まっていけば、フードロス問題解決の一助になることはもちろん、環境問題への関心もより高まっていくだろう。

 

ロウソクからリチウムイオン電池開発へ

ノーベル化学賞受賞 吉野彰 工学博士が「リチウムイオン電池と環境問題」と題して記念講演を行った。

 講演はノーベル賞授賞式後に行われる、ノーベル・レクチャーでの発表に則り、自己の半生を紹介する形式で始まった。

 その中で「化学に興味を持ったきっかけ」で紹介したのが、小学生の時に担任教師から紹介された「マイケル・フェデラー著 ロウソクの科学」。この本の中で何故炎の色が変わるのか、場所によって形はどうなるのかといったことが特に印象深かったと話した。

 また、授賞理由であるリチウムイオン電池における「カーボン材料を負極、Liイオン含有金属酸化物を正極にする」について解説をした。

 今回の受賞に際して、産業界の研究者が抱えるハンディキャップについても語った。

 産業界で研究に携わる場合、社外秘の情報を取り扱うことになり、特許申請という形で外に情報を出せるものの、研究当時に論文を発表するといったことはできない。そのため受賞項目を受賞者より先に研究していたとしても、特許だけでは証明することが難しく受賞には不利な状況にあると話した。

 しかし自身の場合は、2019年に欧州特許庁が主催する「欧州発明家賞(European Inventor Award)」で受賞したことにより、特許に箔がつき、論文などにも劣らない信頼のおける根拠となったことが、この度の受賞に繋がったのではないかと話した。

 最後に『もし自身の研究でノーベル賞が取りたいのであれば、第三者による権威付けが必要です。欧州発明賞など権威ある賞を受賞できれば、必ず世間は認めてくれます』と話し、会場だけではなく産業界で研究に携わる若者全てにエールを送った。

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