不倫を理由に解雇?&不況が原因、社員の経費を削減するには?

自動車整備士・整備工場の労務相談室

せいび界2012年6月号Web記事

Q1、

当社の整備士とフロントの女性社員が不倫関係にあることが判明した。その噂が近所にも広まってしまい、業務に支障が出ている。不倫を理由に解雇することはできるのか?

A1、

恋愛は個人の自由です。ただし、それが、

○会社内での不倫

○取引先社員との不倫

となる話は別です。場合によっては「懲戒の対象」とすることができるのです。

まず、会社内での不倫について考えてみましよう。例えば、上司と部下が不倫関係に

あったとします。この場合、もっとも懸念されるのは、社内秩序への影響です。仕事に私情が絡み、業務遂行に影響が出るなら、個人的な問題では済みません。

この場合はどちらかを配置転換し、社内秩序を回復することが重要です。ただし、会社内での不倫でも、それは個人的な問題です。そのため、「会社内での不倫=懲戒解雇」とは法的にできません。

社内不倫に関して、参考となる判例があります。

<繁機工設備事件 旭川地裁 平成元年12月>

○ともに家庭のある男性社員と女性社員が不倫関係に
○社内で噂となり、取引先にも広まった
○社長は交際を止めるようにと忠告した
○本人たちが聞き入れなかったため、女性社員に自主退職を勧めた
○女性社員は自主退職をしなかったので解雇した
○女性社員は 「解雇は無効」として訴えた

そして、裁判所の判断は

○解雇が成立する事実があるとは言えない
○解雇は無効

としたのです。

このポイントは「不倫が企業運営に具体的な影響を与えているかどうか」ということです。今回の場合は「具体的な影響とまではいかない」と判断したのです。

次に、取引先社員との不倫を見てみましよう。例えば、自社の営業マンと取引先の女性社員との不倫です。この場合、社内秩序だけでなく、取引先の秩序も乱してしまいます。

結果として、取引先からの信頼を失うことにもなり、取引停止になる場合もあるでしょう。こうなると、解雇できる可能性が上がります。

参考として、次の判例をご紹介します。この判例は取引先社員との不倫ではありませんが、噂が広まったために、業務上の支障が出た事例です。

<日南市事件 宮崎地裁 昭和57年11月>

○消防署職員が同僚の妻と不倫関係に
○地域で噂が広まる
○防火指導の戸別訪問などの業務に支障が出る
○消防署は不倫を理由に「適性を欠く」として解雇
○解雇された消防署職員は 「不正な解雇」として訴えた

そして、裁判所は「適性を欠き、解雇は正当」と判断したのです。社外の人間との不倫はプライベートな問題とはいえ、会社に対する影響が大きい場合もあります。関係ない社員までも影響を受けてしまうでしょう。特に狭い地域でビジネスをしている会社なら、なおさらでしょう。場合によっては、関係ない社員が退職していく可能性もあります。 私自身、不倫問題のご相談をお受けすることが「よく」あります。社内、社外のいず れにせよ、不倫が経営に影響する場合もあります。

こうなると防止するためにも

○就業規則に「会社の秩序を乱す行為の禁止」を明記する
→ 「会社の秩序を乱す行為」の例示として、「不倫」を記載してもよい

○そういう行為をした場合、重い処分があると認識させる

ということが必要です。

個人的な行為でも会社に大きな損害を与える場合があります。しかし、個人的な問題のため、社員教育で対応するレベルのものではありません。ですから、就業規則の記載も重要となり、事が起こった時の対応方法も事前に決めておく必要があるのです。

Q2、不況が原因、社員の経費を削減するには?

景気が悪くなり入庫減少し、売上も減少した現状では、人件費の負担が大きい。とりわけ、景気の良い頃に中途採用した整備士の給料が現在の仕事量に見合ったものでなく、経営を圧迫している。そのため、少しでも節約したいので経費削減したいのだが、良い方法はないのだろうか?

A2、

基本給の他に諸手当を払っていますか? 例えば、役職手当、通勤手当、住宅手当などです。この中の住宅手当の工夫により、社会保険料が削減できる場合があります。 さて、それはどんな場合でしようか。

住宅手当は、毎月の基本給に上乗せする形で支払います。しかし、これを支払わず、 賃貸借契約を下記の形式に変更します。

社員個人の賃貸借契約 → 法人契約の借上社宅の契約

例えば、社員Aさんが個人の契約で、家を借りているとします。Aさんは家賃が8万円で、基本給十住宅手当=34万5千円です。このうち住宅手当が4万円です。

この場合、Aさん個人の契約を法人契約に変更します。そして、Aさんの月収を基本給のみ30万5千円とします。すると、会社が家賃8万円を支払うことになります。 そして、Aさんから家賃4万円を徴収することになります。

結果、会社が負担しているお金は、下記のようになります。

【変更前】

○会社の負担→
Aさんに支払う住宅手当4万円

○Aさんの負担
→Aさんが支払う家賃8万円ー住宅手当4万円=4万円

【変更後】

○会社の負担
→会社が支払う家賃8万円ーAさんが負担する4万円=4万円

○Aさんの負担
→会社に支払う4万円

つまり、動くお金の額は以前と同じです。しかし、この変更をすると、社会保険料が軽減されるのです。具体的には、このケースで年間5万6千円の負担が減ります。さらに、Aさんは所得税、住民税も軽減されることになります。

結果、負担する家賃の額は以前と同じなのに、社会保険料の額は「Aさん」も「会社」も減っているのです。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)

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