東京都は2026年5月29日、総額542億円(うち債務負担行為12億円)の補正予算案を発表した。中東情勢の影響が長期化するなか、石油のみに頼らない社会の実現に向けてエネルギー構造の転換を加速させるとともに、都民・事業者の不安払拭を図るもので、6月9日開会の都議会定例会に提出される。自動車関連では、補正の柱の一つ「エネルギー構造の転換等に向けた先駆的施策」のなかで、ゼロエミッション・ビークル(ZEV)の普及促進策が盛り込まれた点が注目される。
ZEV普及促進事業に83億円、補助上限額を引き上げ
補正予算案では「脱炭素化に向けた取組の強化」(計123億円)の中核として、ZEV普及促進事業に83億円を計上。電気自動車(EV)等を導入する都民や事業者への補助について、車両価格の上昇等を踏まえて補助上限額を引き上げ、ZEVのさらなる普及を後押しする。あわせて、シェアリング・レンタル用車両のZEV化を促す「シェアリング・レンタル用車両ZEV化促進事業」にも1億円を計上し、同様に補助上限額を引き上げる。
報道によると、引き上げ後の補助上限はEVで最大130万円(現行最大100万円)、プラグインハイブリッド車(PHV)で最大115万円(同85万円)となる見通しで、いずれも30万円の引き上げとなる。
注意:補助上限の具体額(EV最大130万円等)は報道ベースの数値であり、本拡充は補正予算案の段階。都議会での議決を経て実施される見通しで、適用条件・開始時期は公益財団法人東京都環境公社「クール・ネット東京」の公式発表で最終確認が必要。
国のCEV補助金と併用可、合算で最大260万円の見込み
都のZEV補助金は、国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金、EVで最大130万円)と併用できる。都の補助が最大130万円に拡充されれば、単純合算でEV1台あたり最大260万円の補助が見込まれる(現行は合算最大230万円)。
| 制度 | 現行(令和8年度) | 補正予算案後(報道ベース) |
|---|---|---|
| 国 CEV補助金(EV) | 最大130万円 | 変更なし |
| 東京都 ZEV補助金(EV) | 最大100万円 | 最大130万円(+30万円) |
| 東京都 ZEV補助金(PHV) | 最大85万円 | 最大115万円(+30万円) |
| 国+都 合算(EV) | 最大230万円 | 最大260万円(見込み) |
満額受給にはメーカー評価と設備導入が条件
都のZEV補助額は一律ではない。自動車メーカー別に、給電機能の有無、ZEV乗用車の販売実績、車両ラインナップ数、GX実現に向けた取組状況などを評価して設定される。さらに購入者側の上乗せとして、充放電設備(V2H・V2B)または公共用充電設備の導入で最大10万円、再生可能エネルギー(再エネ100%電力契約または太陽光発電設備)の導入でEV最大30万円が加算される。一方、税抜価格840万円以上の高額車両は算定補助額が0.8倍に圧縮される。対象は令和8年4月1日以降に初度登録・初度検査を受け、国のCEV補助金の対象となるEV・PHV・FCVの新車で、令和8年度の申請受付は4月30日に開始、令和9年3月31日まで(予算上限到達で早期終了の可能性あり)。
整備業界への影響:高電圧整備・設備投資の需要拡大
全国トップクラスの補助水準がさらに引き上げられ、ZEV普及促進事業に83億円が投じられることで、都内を中心にEV・PHVの普及が一段と加速する公算が大きい。シェアリング・レンタル車両のZEV化支援も加わることで、法人・フリート需要の電動化も進む。整備業界にとっては、駆動用高電圧バッテリーや電子制御装置を備えた車両の入庫増を意味し、高電圧作業に対応できる人材育成(特別教育・講習の受講)、絶縁工具やスキャンツールなどの設備投資、電子制御装置整備(特定整備)の認証取得といった備えの重要性が一段と高まる。補助制度を入口としたEVシフトは、車両販売の現場だけでなく、その後を担う整備・点検の現場にも確実に波及する。
なお今回の補正予算の財源は基金繰入金が中心で、財政調整基金379億円、ゼロエミッション東京推進基金141億円、東京強靱化推進基金22億円などが充てられる。EV・ZEV関連以外にも、ナフサ代替素材等の開発支援、中小企業向け制度融資の信用保証料補助の拡充(小規模2分の1→4分の3、中小3分の2)、保育・医療・介護施設等への物価高騰緊急対策などが盛り込まれている。