日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)は2026年6月9日、第45回通常総会を開催した。最大の焦点となったのは、損害保険大手4社と締結した団体協約である。修理工賃(指数対応単価)のベースアップに加え、車体整備の透明性確保への取り組みに対する加算や、産業廃棄物処理費の支払い拡大などで合意した。総会では全6議案が承認され、令和8年度は外国人材の評価試験事業への参入など新たな施策にも踏み出す。
損保大手4社と団体協約を締結――工賃単価の引き上げで合意
令和6年度にスタートした損保大手4社との団体協約交渉は2年目を迎えた。副会長兼法関係対策委員長の泰楽秀一氏は、国土交通省の「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」を踏まえつつ、「指数対応単価(工賃単価)のベースアップ」を軸に交渉を進めたと報告。あわせて、産業廃棄物処理費の支払い拡大、「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」を前提とした加算、ランク制度の横展開と日車協連独自メリットの確保などを交渉テーマに据えたとした。下請法をはじめとする法改正や行政書士の取り扱いといった論点も交渉の場で取り上げたという。
その結果、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険の4社といずれも団体協約締結で合意。各社で提示の形式や水準は異なるものの、工賃単価のベースアップ、透明性確保への取り組みに対する加算、産業廃棄物処理費の支払いなどで前進が得られた。
合意後の単価水準について泰楽氏は、「全国平均でおおむね8,000円台(8,020~8,320円程度)になる見通し」と説明した。また、日車協連の組合員に対しては、透明性確保への取り組みを前提とした加算が遵守状況にかかわらず無条件で適用される点を、組合員ならではのメリットとして挙げた。
4社のうち東京海上日動との交渉はもっとも難航し、6月5日ぎりぎりまで続いたという。とりわけ、これまで認められにくかった産業廃棄物処理費の支払いで前進が得られた点を成果として報告した。
泰楽氏は「2年目の交渉は厳しかった。とても満足のいく状況とは認識していない」と率直に総括。令和8年度は国土交通省の調査も控えるなか、総会後速やかに改めて交渉を申し入れ、3年目を進める方針を示した。
令和7年度の活動と令和8年度の方針
技術委員会――補修塗装の「工数化」を推進
技術委員会は、スライドドアの新品取り替えに伴う補修塗装作業、およびスライドドア中央の3cm²程度の軽度な凹みを補修した際の補修塗装作業について工数調査を行い、工数の素案を作成した。全国中小企業団体中央会の「中小企業組合等課題対応支援事業」として実施し、2月にはステークホルダー向けの成果普及講習会を開催している。令和8年度は塗装工数の実証と工数化を中核課題に位置づけ、客観性・公平性・実効性のある工数策定をさらに前進させる。
教育委員会――「鈑金基礎編」へ、開催回数の底上げが課題
高度化車体整備技能講習では、令和7年度テーマの「車体整備ガイドライン編」に1,389名が受講。電子制御装置編は特定整備の実技免除認定講習として国交省の認定を受け、24名が受講した。令和8年度のテーマは「鈑金基礎編」とし、鈑金修正やパテ成形の基礎に加え、新人教育に臨む姿勢までを全国統一カリキュラムで扱う。
受講者目標は都道府県割(会員母数の70%)から算出した3,000名だが、実績は1,300~1,400名で頭打ちが続く。質疑では、23県が年1回しか講習を開催していない実態が報告され、教育委員長は「1回の講習で目標人数を満たすのは無理」として、今年度から各県で年2回開催することを理事会で決定したと説明。委員長自ら開催の少ない県へ啓蒙活動に出向く考えも示した。
経営委員会――ASV対応優良事業者と「見える化」
経営委員会は、日車協連の自主認定制度「先進安全自動車対応優良車体整備事業者」の取得を推進。1,000社達成を目標に、各都道府県で20~30社(会員事業所数の25%)の認定を目指して活動した。車体整備記録簿・特定整備記録簿は紙版とエクセル版を用意して普及を促進。国交省の「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」を受け、ソフトウェア開発業者と協力して「車体整備の見える化ガイドライン」のフォーマットを作成し、実証を行った。
調査研究・広報・共同購買・教科書編纂
調査研究委員会は技術委員会とともに補修塗装工数の検証・素案作成に取り組み、リサイクルパーツの販売資料についても検証を行った。広報委員会は「日車協連全国ニュースWeb版」を定期更新するとともに、団体協約に関する記者発表の様子をYouTubeでも配信。共同購買委員会はECサイトをホームページ内に設置し、決済の迅速化を図った。教科書編纂委員会は、令和9年度からの整備士資格制度改定(自動車車体整備士の「自動車車体電子制御装置整備士」への移行)を見据え、「車体整備」「電子制御装置整備」の教科書執筆と講師研修会を実施した。
新施策――「業種としての確立」と外国人材の評価試験
令和8年度の新たな取り組みとして、小倉会長は、自動車車体整備を独立した専門分野として明確に位置づける検討に、関係委員会が連携して着手する方針を表明した。車体整備(鈑金塗装)は、エンジンなどを扱う一般的な自動車整備とは異なる技能や専用設備、安全への重い責任を要する仕事でありながら、制度や統計の上では「自動車整備業」の一部として扱われ、独立した専門領域としては認識されていない。その結果、業界の実態が見えにくく、専門職としての社会的な評価や正当な処遇に結びつきにくいのが実情だ。こうした現状を踏まえ、車体整備の専門性を社会に正しく認識させ、正当に評価される環境を築くことを、業界の将来に向けた重要課題に据えた。
さらに、令和9年度から始まる育成就労・特定技能制度において車体整備分野が新設されることに伴い、日車協連がその技能評価試験を担うこととなった。これを運営するため、評価試験関連の委員会を新設する委員会規約の改定を第5号議案として上程し、承認された。人材確保が業界共通の課題となるなか、外国人材の育成・受け入れを持続的発展に欠かせない柱と位置づけ、公正かつ実効性のある制度運営を目指す。
団体協約を軸に、将来を見据えた総会に
第45回通常総会は、損保大手4社との団体協約締結を最大の成果としつつ、補修塗装の工数化や高度化技能講習を通じた人材育成、車体整備の透明性確保など、現場に直結する課題への取り組みを確認する場となった。あわせて、外国人材の技能評価試験事業への参入や、車体整備を独立した専門領域として位置づける検討の開始など、業界の将来を見据えた新たな一歩も示された。上程された全議案は、いずれも承認された。